歳を取るって大変なことですね。今まで当たり前だったことが次々にそうではなくなってきます。
若いころは、海でどんなに日焼けしても1年後には元の肌の色に戻っていました。ところが歳を取るとそうは行きません。皮膚の再生が遅くなっているんですね。
また、ナイターでテニスをやっていると「夜はボールが見えなくて駄目だ!」という言い訳が飛び交います。
そんな時、ビタミンAの作用を知ると、なんとなく嬉しくなるんです。
ビタミンAとは?
ビタミンAは一つの化学物質を指すのではなく、レチノール、レチナール、レチノイン酸、及びこれらの3-デヒドロ型、及びこれらの物質から作られた化合物(誘導体)の総称です。
体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAはカロテノイド色素群に属し、約50種類あります。その主なものは、β-カロテン、α-カロテン、クリプトキサンチンです。特にβ-カロテンは、他のカロテノイドに比べて効率よくビタミンAに変換されます。
ビタミンAとしての生物学的効力を表す用語は、「レチノール当量(RE)」が使われていて、レチノール1μgは、α-カロテン24μg、β-カロテン12μg、クリプトキサンチン24μgに相当します。
ビタミンAの特徴は、とても不安定で、酸、空気、光、熱によって分解されたり変化してしまうということです。
ビタミンAの作用
ビタミンAは、細胞質から核内に入り、受容体に結合して、遺伝子の発現を調節します。多くのタンパク質の合成を調整するのでビタミンAの作用は、私達の身体の全身に及びます。
ビタミンAによる美肌を保つ作用
ビタミンAの作用は、主に皮膚や粘膜などの上皮組織を健康な状態に保つことです。皮膚は常に新しく生まれ変わっているが、ビタミンAが不足すると、新しい物が作られなくなり、カサカサになり、皮膚が弱ると肌荒れやシワの原因
となります。
また、ウィルスが入りやすくなり感染症が起こります。
ビタミンAによるがんの抑制作用
ビタミンAは未分化の細胞を成熟させるため、がんの抑制作用があると言われています。がんは完全に分化すると増殖が止まります。
ビタミンAによる目の機能に関わる作用
ビタミンAは、網膜の色に反応する成分であるロドプシンの原料です。
ビタミンAが不足すると
成長障害
ビタミンAは、成長や胎生期(受精から分娩までの期間)の分化にも深く関わっているため、ビタミンAが欠乏すると、成長障害が起こります。
夜盲症
ビタミンA欠乏症の初期段階には夜盲症が起こり、その後、結膜・角膜乾燥症に進行し、失明する場合もあります。発展途上国では。年間25万人から50万人の栄養不良の子供たちが盲目になっていると推定されています。
感染症
ビタミンAが不足すると、皮膚や呼吸器の粘膜が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。
ビタミンAが不足する原因
ビタミンAの不足には、次のような原因が考えられます
ビタミンAの摂取が過剰になると
ビタミンAの過剰症には、急性と慢性の症状があります。
急性のビタミンA過剰症
腹痛、悪心、嘔吐、めまい、過敏症などが出現した後、全身の皮膚落屑(らくせつ)がみられます。
慢性のビタミンA過剰症
全身の関節や骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾腫、脳圧亢進による頭痛及びうっ血乳頭などが起こります。
催奇形性、骨密度の減少、骨粗しょう症も知られています。
ビタミンAが過剰になる原因
ビタミンAが過剰になる原因としては次のようなものです。
- 北極熊の肝臓や魚の肝油を大量摂取した場合などにみられる
- 連日、7,500μgREを服用すると慢性症状が出現すると言われている
- ビタミンAを含有する薬剤を大量に服用する
- レバー等のビタミンAを多量に含有する食品を摂取する
βカロテンとは?
αカロテン・βカロテン・γカロテンは、ビタミンAの代表的な前駆物質です。
ビタミンAは、肝臓に蓄積されることから、牛・豚・鳥などのレバーに多く含まれています。しかし、ビタミンAの前駆体であるカロテノイドが野菜や果物に多く含まれているため動物性食品以外からも摂ることができます。
野菜や果物が赤や黄色なのは、このカロテノイドのためです。カロテノイドには、カロテン、リコペン、ルチンなどいくつかの種類がありあります。
βカロテンの特徴は?
強力な抗酸化力を持ち、動脈硬化、老化、ガンの発生を予防します。また、必要に応じて、体内でビタミンAに変換されるので過剰症による副作用は心配ないとされています。
しかし、動物食品に多く含まれるビタミンAは、吸収されやすいのですが、βカロテンは、腸管からの吸収率が悪く、ビタミンAの約3分の1と言われています。
脂溶性なので油脂といっしょに調理すると吸収率が高まります。
ビタミンAを含む食品
1食当たりの目安量 | 含有量(μgREレチノール) | |
肉 | 豚肝臓(レバー)50g | 6,500 |
鶏肝臓(レバー) 50g | 5,600 | |
魚 | アンコウきも 1切れ(50g) | 4,150 |
メロ(マジェランアイナメ) 1切れ(100g) | 1,800 | |
ウナギのかば焼き 1串(100g) | 1,500 | |
銀だら 1切れ(80g) | 880 | |
野菜 | モロヘイヤ 1/2袋(50g) | 420 |
にんじん 中1/4(50g) | 380 | |
西洋かぼちゃ 120g | 396 | |
あしたば 葉10枚(80g) | 352 |
出典:栄養の基本がわかる図解辞典
肝油(かんゆ)
大昔の話になってしまいますが、幼稚園の時、お帰りの挨拶の時必ず肝油(かんゆ)が配られました。その時はそれが何だったのか分かりませんでした。丸い小さなゼリーのようなもので、甘くてとてもおいしいのです。
休みの前日は2つもらえるので嬉しかったのを覚えています。
1932年にロンドンで、麻疹(はしか)が大流行しました。この時、多くの子供が亡くなったそうです。ところがビタミンAを与えると、その死亡率が低下しました。
その後、他の感染症にも有効であることが明らかになり、ビタミンAは、抗感染ビタミンとして知られるようになったということです。子供に肝油を与える習慣はそこからきていたようです。
お肌などの美容にも、目の衰えなどの老化にも有効で、私たちの大切な免疫まであげてくれるというビタミンA。覚えておいて損はありません。
参照
『よくわかる栄養学の基本としくみ』 秀和システム
『栄養の基本がわかる図解辞典』 成美堂出版
食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/
「統合医療」情報発信サイト
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/06.html