「また、痛風(つうふう)出ちゃった!」
最近はよく聞きます。
「また?」
聞いているほうは経験がないので、申し訳ないのですが笑ってしまう事があります。しかし、本人にとって、痛風の発作は大変な苦痛でしょう。『風が吹いただけでも痛むというのが痛風という名前の由来である』とか『骨折以上の痛み』などと言われるように、耐え難い痛みだそうです。
痛風という病気は日本では明治以前まではなかったそうです。そして食生活が欧米化した1960年代から急激に増えています。
ある日突然、足の親指の関節などが激痛に襲われ、赤く晴れ上がる・・・重症な人は、発作が始まると車椅子に乗らないと移動できないほどです。また、この『痛風』という病気は発作が治まると、嘘のように痛みが無くなるのも特徴です。
しかし、痛風の発作は繰り返し起こり、その周期は回を追うごとに縮まり、症状も酷くなっていきます。腎臓にも症状が広がり、働きが悪くなり、尿毒症を起こすこともあります。
健康でることは幸せに長生きするために一番大切なことです。もっと痛風のことを知って、痛風の予防、改善に役立てましょう。
痛風になる原因
体内の尿酸が蓄積し、特に体温の低い末梢部で、体液で溶け切れなくなった尿酸が結晶化し、炎症を引き起こすと言われています。人間は進化の過程で尿酸を分解する酵素『尿酸オキシターゼ』を失ったのだそうです。
尿酸の正常値は、7.0mg/dl以内です。7.0mg/dl以下であれば溶けて結晶になりません。
健康な人を対象にした米国の研究(尿酸関節炎の5年間累積発症数)※『日刊ゲンダイ』より
尿酸値 | 発症数 |
6.0mg/dl 未満 | 0.5% |
6.0mg/dl 以上 6.9mg/dl未満 | 0.6% |
7.0mg/dl 以上 7.9mg/dl未満 | 2% |
8.0mg/dl 以上 8.9mg/dl未満 | 4.1% |
9.0mg/dl 以上 9.9mg/dl未満 | 19.8% |
10.0mg/dl 以上 | 30.5% |
このデータを見ると尿酸値が痛風と関係があるのは間違いようです。
尿酸値を上昇させる要因
- 遺伝的要因
- 環境要因
遺伝的要因
尿酸値が上昇するのは、遺伝的要因もありますが、これは極めて希なケースです。
環境要因
極めて希な遺伝的要因に対して、環境要因は下記のように、たくさんあります。
- 肉食
- 野菜を食べない
- 肥満度が高い
- アルコール
- プリン体
- ストレス
- 激しい運動
- 脱水状態
- 他の病気の影響
- 薬の影響
上記の中でも、アルコールは体内で分解される時に尿酸が作られます。
尿酸とは「プリン体」の老廃物でビールに多く含まれていますが、蒸留酒(ウイスキー、ブランデー、焼酎)にはほとんど含まれていません。
また、他の病気の影響により、尿酸値が上昇することがあります。主に腎機能の低下、血液の病気、悪性腫瘍などです。
尿酸値に影響を及ぼす薬には、主に次のようなものがあります。
- サイアザイド系高圧利尿薬(フルイトラン等)
- 喘息の治療薬のテオフィリン
- ループ利尿薬(ラシックス等)
- 結核治療薬のピラジマナイド
- 小児用バファリン
検査と診断
体には常に1200mgの尿酸がプールされていて、1日にそのうちの700mgが入れ替わります。700mgが新たに生み出され、700mgが排泄されるという事です。
このバランスが崩れることで、高尿酸血症になります。血液の平均尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症です。
尿酸値を調べる検査には次のようなものがあります。
- 1日に排泄される尿から尿酸排泄量を調べる検査
- 発作を起こした関節から関節液を採取する検査
- 関節X線検査
- クリアランス検査 ※1
※1 痛風・高尿酸血症の患者の多くは、腎機能を示すクレアチンクリアランスは正常範囲内を保たれているにも関わらず、尿酸クリアランス(尿酸排泄機能)が低下している事が知られている
※高尿酸血症と言われる7.0mg/dl以上の尿酸値であっても必ず痛風になるわけではない
タイプに合わせて薬が使い分けられる
a.尿酸合成過剰型
検査の結果、体の中で尿酸が過剰につくり出されるタイプには、尿酸合成阻害薬(アロプリノール)が使われる
b.尿酸排泄低下型
体からの尿酸排泄量が低下しているタイプには尿酸排泄促進薬(プロベネシド)
c.混合型
aとbの両方が混じるタイプには尿酸合成阻害薬と排泄促進薬を併用
d.痛風発作を抑える消炎鎮痛薬(ナプロキセンなど)
薬は『痛風』を治すものではない
「尿酸合成阻害薬」にしても「尿酸排泄促進薬」にしても、『痛風』という病気の治療をするためのものではありません。「尿酸合成阻害薬」は尿酸が体の中で多く作られてしまう状態を化学物質の力で抑え込むもの。そして「尿酸排泄促進薬」は同じように尿酸の排泄を無理やり行うもの。
原因が解決しない限り、薬をやめてしまえば元に戻るのは当然です。
そのまま治ってしまう人がいたとしたら、生活改善などにより、その人の治癒力で治ったという事です。すると、「薬は必要なかった」という事になるのではないでしょうか?
「消炎鎮痛薬」はあまりの激痛からのがれるため、仕方ないかもしれません。幸い痛風の痛みはいつまでも続くわけではありません。
どちらにしても人間の身体にとって薬は異物です。入れなくて済むものは入れないに越した事はありません。
「薬はいつまで飲むのか?」の質問に対して、痛風の専門の先生はこう言います。
「血清尿酸値が4.0mg/dl~5mg/dl台が続くようであれば薬の減量は可能だが、実際に服薬を中止できる患者は少ない・・・」
それは当然ですよね。薬は痛風を治すものではないのですから。
「痛風は食事療法など生活習慣だけでは治らないのか?」の質問に対して、高尿酸血症の原因は
- 食事や飲酒による影響が2割~3割
- 尿中尿酸排泄低下、尿酸産生過剰など体質的な影響が7割~8割
という事ですが、確かに食事などの影響は2割~3割くらいなのかもしれません。しかし、生活習慣は食事だけではありません。
慢性病は無理な生き方に原因がある
『現在の医療が手を焼いている慢性病の大部分は、無理な生き方に問題がある。無理な生き方により自律神経は交感神経優位に傾き、その結果、低体温、血流障害が起きている。無理な生き方を改めれば、それらの問題は解決する。』故・安保徹 新潟大学教授
尿酸は通常、尿に濾過されるが血液中の尿酸の飽和濃度を越えると、尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着します。この尿酸塩に対して白血球が攻撃することで痛風発作は起きます。
尿酸値が高くても痛風を発症しない人もいます。こういう人の場合は、白血球が尿酸結晶を攻撃していないという事です。
交感神経優位な状態が続くと、白血球のうちの顆粒球が増大し、炎症を引き起こしやすくなります。痛風を起こす人と、起こさない人の差はその辺にあるように思えます。
また、血流障害は、酸素不足により代謝を下げ、体のあらゆる機能障害につながります。尿酸排泄低下も尿酸産生過剰も、その代謝低下による機能障害が原因に思えます。
安保徹氏の言っている無理な生き方とは、主に次のとおりです。
- 睡眠不足
- 働き過ぎ
- 精神的ストレス
- 食品添加物の多量摂取
- 薬の取りすぎ
薬で切り抜けるというのも一つの考え方だと思いますが、飲み続けなければならないという点ではあまり賛成できません。
お医者さんには怒られるかもしれませんが、どんどん薬が増えていくばかりで、改善されない人達をみていると、なんとか良くなってもらいたいと思ってしまいます。
無理な生き方を取り除く事が、慢性病からの脱却の一つの方法です。当然、食事・運動などの生活習慣の改善は必要です。ストレスにならない程度に、ぜひお試し下さい。