糖鎖は細胞同士を繋ぎ、情報をキャッチしてその情報処理を行います。私達生物にとって重要なものです。この糖鎖が不足することによって、情報が届かなかったり、届いても遅くなったりということで知的健康や身体健康、子供の発育の問題を引き起こすと言われています。
糖鎖とは
ブドウ糖などの糖がグリコシド結合した化合物で、結合する糖の数は二つから数万にもなります。生体内のタンパク質や脂質と結合して、細胞どうしの認識や相互への作用に重要な役割をはたしています。
グリコシド結合とは?
グリコシド結合とは、糖のヒドロキシル基(水酸基)が、他の糖やアルコールのヒドロキシル基と反応して、脱水してできる結合をいいます。
グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-セチルガラクトサミン、フコース、キシロース、シアル酸などの糖が複雑に連なって糖鎖を形成します。
細胞表面の糖鎖は、細胞(白血球、癌細胞など)、細菌、ウィルス、毒素などが細胞に接着する際の結合部位となり、細菌は宿主の糖鎖と結合するためのレクチンを持っています。
レクチンとは?
一般的にレクチンとは、植物・動物・微生物に存在するタンパク質または糖タンパク質のうち、糖に対する特異的結合性を持った物質の総称です。
二つ以上の結合部位を持ち、動物・植物細胞を凝集することができます。
タンパク質や脂質に糖鎖が結合したものは、複合糖質と呼ばれます。複合糖質は糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカンに分類されます。
糖鎖の機能と役割
糖鎖は、蛋白や脂質と結合して、糖蛋白質や糖脂質となり、安定化させ水分を含ませ、組織を保護したり、細胞表面に発現して細胞間の情報伝達に重要な役割を果たします。そのほとんどの機能は解明されておらず、糖鎖は無限の可能性を秘めているといわれているようです。
細胞の種類を識別
・血液型は表面の糖鎖構造の違いによってABOに分けられています
・細胞が癌化すると、糖鎖構造に違いがでます
タンパク質の品質管理
古くなったり、傷ついた細胞の糖鎖を認識して、分解、新陳代謝の指標となります。
タンパク質の保護
細胞表面を覆い、分解や熱からタンパク質や細胞を守ります。
感染の入口
・細菌やウィルスは、細胞表面の特定の糖鎖を認識して体内に出入りします
・増殖したインフルエンザウィルスが細胞外へ出るとき、シアリターゼ(酵素)で糖鎖を切って出ますが、インフルエンザ薬は、その酵素を阻害し効果を発揮します
糖の種類
単糖類
単糖とは、これ以上加水分解されない最小単位の糖をいいます
・グルコース(ブドウ糖)
穀類や果物に多く含まれ、栄養学上最も重要な糖質です。血液中に血糖として約0.1%(一定濃度)含まれ、エネルギー源として利用されるほか、生理作用に関与します。
・マンノース
・ガラクトース
乳糖の構成成分で、乳汁に多く含まれます。ブドウ糖と結合して乳糖に含まれ、甘みがあり、水溶性です。
・NアセチルDグルコサミン
自然界では、カニやエビなどのキチン質の構成分子として多量に存在しており、生体内ではヒアルロン酸やコンドロイチンなどのグルコサミノグルカンの構成分子として存在しております。
・NアセチルDガラクトサミン
・キシロース
甘味のある還元糖です。
※還元糖とは、分子内に遊離性のあるアルデヒド基やケトン基をもち、還元性を示す糖類。ブドウ糖、果糖、麦芽糖など。
・シアル酸
・グルクロン酸
動物の解毒作用に関係のある物質で、毒物とグリコシド結合して尿中に排泄されます。薬物副作用などに使われます。
・イズロン酸
ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖の構成成分として存在します。
※ヘパリン⇒肝臓から発見され、アンチトロンビンに結合して血液の凝固を抑制する作用を持つ硫酸化多糖
※ヘパラン硫酸⇒グルクロン酸またはイズロン酸とN-アセチルグルコサミンからなる二糖単位が50~100回繰り返した糖鎖(硫酸化多糖)。生体内では糖タンパク質として存在
・フコース
炭素数6のデオキシ糖の一種で、天然にはD型とL型が動植物に広く存在します。名称は、フコースが海藻の粘り気成分であるフコインダン中に発見されたことに由来します。
複雑な糖鎖の構造は、これらが組み合わさって作りだします。これらの糖鎖の複雑さが、生体反応の巧妙な複雑さを生み出すと言われています。
2糖類
・マンノース
D-グルコース(ブドウ糖)の二分子からできていて、デンプンに麦芽中のアミラーゼを作用させて得られます。甘味はスクロース(ショ糖)より弱く、水飴の主成分です。
・トレハロース
グルコースがグリコシド結合してできた二糖です。高い保水力があり、食品や化粧品に使われます。抽出が難しく高価だったがデンプンを素材とした安価な大量生産技術が確立されました。
・ラクトース(乳糖)
哺乳類の乳の中に約5%含まれている二糖類で、わずかに甘く、無色の結晶です。加水分解でブドウ糖とガラクトースになり、人工乳などに利用されます。
多糖類
・アミロース
アミロペクチンとともにデンプンの構成成分です。数百個のグルコース(ブドウ糖)が鎖状につながったもので、デンプン中に20%~30%含まれています。ヨウソデンプン反応は濃青色になります。
・グリコーゲン
動物の肝臓・筋肉などに含まれます。容易にブドウ糖に変わり、動物のエネルギー源として重要な役割を果たします。単離すれば、白色、無味無臭の粉末になります。
・セルロース
植物細胞の細胞壁および植物繊維の主成分で、天然の植物質の3分の1を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物です。繊維素とも呼ばれます。
・キチン
窒素を含む多糖類の一種で、甲殻類、昆虫類などの節足動物の外骨格や細菌・菌類の細胞壁に含まれます。生体への適合性に優れ、人工皮膚・縫合糸など医療用に用いられます。
複合糖質
生体内の糖鎖の多くはタンパク質や脂質と結合した複合分子として存在します。
大きく、糖タンパク質、プロテオグリカン、糖脂質の3つに分類されます。
糖鎖はサプリメントとして代替医療を取り入れている様々なクリニックでも使用されています。
人間の身体の中の細胞どうしの情報交換に重要な役割を果たす糖鎖。身体って大切で不思議な糖鎖を調べました。