2006年にニューヨーク市での飲食店における「実質使用禁止」により、知られることになった「トランス脂肪酸」ですが、日本ではいまだに、それほど問題視されていません。
「動物脂は血液をドロドロにしてしまうから健康のために植物性油を使おう!」
しかし、もっとも危険な「トランス脂肪酸」はその植物性油から作られた人工の脂肪酸です。
私達の脳も60%は脂質でできているし、大切な細胞膜も主に脂質でできています。身体を健康にしてくれる脂肪と、身体を駄目にする脂肪を摂取するのではまったく違うことになってしまいます。
まずは、摂ってはいけない油を知ることです。
トランス脂肪酸とは?
植物油などの脂肪酸は常温で液体であるため、血液をどろどろにしないという良い点もあるが欠点もあります。一つは不安定な構造上、酸化しやすいこと、もう一つは臭いや味などにクセがあります。
せっかく身体に良い油なのに、その欠点を克服しない限り商品としてなりたたない…。ということで人口的に加工されます。その過程で生まれたのが『トランス脂肪酸』です。
トランス脂肪酸の危険
なかなか分解できないトランス脂肪酸
トランス脂肪酸を体内に取り込むと、身体は一生懸命分解して代謝しようとします。多くの時間がかかり、大量のミネラル・ビタミンを消耗します。
細胞膜は脂質でできている
細胞膜には細胞どうしを仕切るだけでなく、細胞内外の浸透圧を調節したり、細胞に必要な酸素や栄養を吸収したり、細胞内で発生した老廃物を排泄したり、情報の伝達もします。
そこにトランス脂肪酸が入り込むと、必須脂肪酸の役割を果たさなくなり、細胞膜の構造や働きが不完全になってしまいます。
肝臓にダメージ
トランス脂肪酸は、肝臓にダメージを与えて、体内のコレステロール合成量を調整する機能を崩してしまうため、HDLが減り、LDLが過剰に生産されると言われています。
過剰となったLDLは血管壁に留まりやすく、酸化します。白血球のマクロファージが掃除(動脈壁内に引き込んで)しますが、その残骸が堆積して血管が狭くなり、心臓病のリスクを高めると言われています。
糖尿病への関連
ハーバード大学の14年間にわたる食事調査で、「トランス脂肪酸の摂取がもっとも多いグループは、もっとも少ないグループに比べて、糖尿病の発症の危険度が30%高い」というデータがあります。
その理由は「トランス脂肪酸は細胞膜の構造を不安定にするため、インスリンが分泌されても、それを受け取る細胞膜の受信機能が鈍り、インスリンが働かず、結果、血糖値が上がってしまう」ということです。
ガンへの関連
細胞膜そのものに、発がん性物質が細胞内に入るのを防ぐ役割がありますが、細胞膜は主に脂質でできているので、その機能を正常に働かせるためには良質の油を摂ることが必要です。
細胞膜から伸びている糖鎖(とうさ)は、免疫系であるマクロファージ、NK細胞、キラーT細胞にガン細胞攻撃の指令を出します。
脳への影響
人間の脳は3歳までに神経回路が決定するようです。脳の神経細胞はオメガ3が20%以上含まれてはじめて情報が正しく伝達されると言われています。不足したオメガ3の代わりにトランス脂肪酸が細胞膜に入りこんで機能を低下させる可能性は十分にあるのではないでしょうか…。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂質の性質は、脂肪酸が鍵を握っています。脂肪酸は大きく分けて、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわかれます。脂肪酸の分子構造は、炭素と水素が手を組んで1本の鎖状に連なっています。鎖状に繋がった炭素どうしが一部、二重結合の部分を持っているかどうかで性質がまったく違ってきます。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸の分子構造は、炭素が長く連なり、その一つ一つに水素がくっついた1本の鎖のような構造をしていますが、それぞれの炭素からは4本の腕が伸びていて、そのうち2本の腕は両隣の炭素とつながり、他の2本は水素とつながっています。
先頭の炭素は後ろの炭素一つとつながり、他の三本は水素とつながっています。一番後ろの炭素は前の炭素一つとつながり、他の腕は、酸素と二重構造でつながり、もう一つは水酸基とつながっています。
このようにそれぞれが安定してつながっていれば、強度が強く、常温でも個体になります。豚脂(ラード)、牛脂、バター、パーム油、やし油などがこれにあたります。これらの油は、常温では固体です。
料理などすると熱で液体になるが、食べて身体に入ると、固まります。人間の体温は牛や豚の体温より低いからです。よってヒト血液に入れば、血液がドロドロになるということです。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸の分子構造は、先ほどの飽和脂肪酸の構造と比べて、ところどころ炭素同士が二重結合していて、そのため、その炭素は水素一つとしか手をつないでいません。そのため炭素の鎖にところどころ穴があいた構造になるようです。
その穴の数が多いほど、固体になりにくく、液体になってきます。植物油、魚油(ぎょゆ)などがそれにあたります。不飽和脂肪酸は融点が低く、常温では液体です。そのため私達の身体に入っても血液中をスムーズに流れる。だからカラダに良い油と言われています。
マーガリンはなぜ固形?
マーガリンは、19世紀末に第二次世界大戦によるバター不足のためヨーロッパで開発されたそうです。当時にしてみれば、すばらしい発明だったでしょう。
マーガリンは、植物油から作られています。原料は、大豆油、ひまわり油、コーン油、菜種油、やし油、パーム油、綿実油などです。それなのになぜ、常温でも固形なのでしょうか? …人工的に水素を添加して無理やり性質を変えているのです。
前述で、植物油などの不飽和脂肪酸は炭素の列に穴が空いている。と言いました。その穴を炭素と水素を結合させて塞げば、飽和脂肪酸のように常温で固体になります。
マーガリンの硬さは水素を添加した量によって変わります。少しだけ水素を添加すれば(これを部分水素添加というそうです)、パンにぬりやすいおいしいマーガリンのできあがりです。
しかし、その部分水素添加の過程でトランス脂肪酸が大量につくられてしまいます。
通常の植物油に含まれる不飽和脂肪酸は、二重結合している炭素に、水素がそれぞれ1個づつ同じ側に並んで結合していますが、部分水素結合を行うと、片方の水素が反対の方向に移動(トランス)してしまいます。
分子構造が、できそこないのような飽和脂肪酸の形になります。これがトランス脂肪酸です。
この分子構造がプラスチックの構造に似ていると言われています。プラスチックは自然界には存在しないので、土に埋めても分解されません。それと似た構造のものが、私達の身体に入ったらどうなるのでしょうか?
植物油はそのまま食用として使われない
そもそも植物油が身体に良いと言われている理由は、常温でも液体であるということ。そうであれば、わざわざ常温でも固体に変形してしまったマーガリンはドロドロ血液を作りやすいのではないでしょうか?
また、植物油を食用にするため臭い成分を脱臭して製品化しますが、その時200度以上の高温で処理されます。脂肪酸は高温にさらされる過程でもトランス脂肪酸が発生すると言われています。
最後に
トランス脂肪酸は、さまざまな加工食品に…
トランス脂肪酸は、サラダ油、マーガリン、フライドポテト、チキンナゲット、ハンバーガー、ポップコーン、ピザ、ショーケーキ、クロワッサン、アップルパイ、デニッシュ、デニッシュ、コーン系スナック菓子、クッキー、カレールウ、クラッカー、ファットスプレッドなどさまざまな加工食品に含まれています。
加工食品の購入時は、ラベル表紙を確認
加工食品を購入する時、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、加工油脂などと表示されているものは避けたほうがよいでしょう。トランス脂肪酸が大量に含まれている可能性があります。
市販のサラダ油、マヨネーズ、ドレッシングにもマーガリンと同じように水素を添加した油が使われていますが、「植物性油脂」「食用精製加工油脂」としか表示されていません。
家庭でも高温になる料理は避ける
「揚げる」「焼く」「炒める」という油で高温になる料理は避ける。
植物油などの不飽和脂肪酸は、160度を超えるとトランス脂肪酸へと変貌し、200度を超えると、連鎖するように急激に増加するようです。
『コールドプレス』表示の油
オメガ3を豊富に含んだ良質の油は、ラベル表示に「コールドプレス」と書かれていて、遮光の容器に入っています。
コールドプレスとは30度以上の熱を一切かけずに原料を搾って油を抽出し、そのままボトル詰めをしたつくり方をいいます。