食物繊維は、健康食品などのテレビコマーシャルでもよく見かけます。今では、なんとなく体に良いということはどなたでも理解しているのではないでしょうか。 人の身体にとって免疫機能が大切なことはよく知られていますが、その免疫機能に大きな影響を与えるのが食物繊維です。そんな食物繊維のことを詳しく知り、健康な身体を維持または取り戻してみませんか?
食物繊維とは?
「人の消化酵素では消化されない食品中の難消化性成分の総体」と定義され、 昔は「食べ物のカス」と呼ばれ便通を良くする以外に役立たないものとされていました。
構造的には多糖類で、地球上でもっとも豊富な有機分子です。しかし、栄養豊富な食物繊維ですがセルロースを含んでいるため人の消化酵素では分解できません。
また、食物繊維は、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素についで第六の栄養素とも言われます。形状は顕微鏡で見ると、多孔質、繊維状、蜂の巣状、へちま状のものがあるようです。
食物繊維は水に溶けるかどうかで、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されます。
水溶性食物繊維
熟した果物などに含まれ、植物の細胞内に存在します。 水分を多く含むため、胃で膨張し、食べ物のかたまりを大きくして、粘性を上げ、胃の中での滞在時間を延して満腹感を与えます。 また、コレステロールや糖質の腸内からの吸収を妨げ、血清コレステロールや血糖の上昇を抑える作用があります。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、野菜、穀類、豆類に多く含まれ、植物の細胞壁を構成します。 腸の働きを刺激して、腸内に発生した有害物質の排出を促す作用があります。
食物繊維の効果と種類
大腸内の様々な細菌が分解醗酵し、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸に変換します。短鎖脂肪酸は、エネルギー源として体内に吸収されたり、腸の細胞の栄養源となります。 また、腸管の血流を増やしたり、腸管の蠕動運動を調整する作用もあります。
腸管の絨毛上皮は、点滴のみで何も食べずにいると委縮します。絨毛上皮が委縮すると、腸の免疫機構が機能しなくなって、細菌が簡単に腸管から血液中に入り込んでしまいます。
食物繊維の働きは、水溶性食物性と不溶性食物繊維で異なります。
水溶性食物繊維の効果(働き)
- 腸内細菌叢の改善
- 脂質異常症を予防
- 高血圧の予防
- 発ガンリスクの軽減
- 便秘の予防
水溶性食物繊維の種類(食品)
- ペクチン(果物、特にりんごやかんきつ類の皮、野菜)
- グアガム(マメ科の植物)
- アルギン酸(こんぶ、わかめ)
- グルコマンナン(こんにゃく)
不溶性食物繊維の効果(働き)
- 便秘の予防・解消
- 痔の予防
- 有害物質の排泄
- 大腸がんの予防
- 糖尿病発症リスクの低減
- あごの強化
- 虫歯の予防
不溶性食物繊維の種類(食品)
- セルロース(穀類、豆類、野菜)
- ヘミセルロース(穀類、豆類、野菜、海藻類)
- ペクチン(野菜、未熟果物)
- リグニン(豆類、穀類のふすま、野菜、ココア)
- イヌリン(ゆりの根、ごぼう、きくいも)
- キチン(カニ、エビの殻)
食物繊維による便秘改善
食物繊維は、便の容積大きくして排便を促し、また発がん性物質をからめて便と一緒に排泄します。
食物繊維はサプリメントで摂れるのか?
サプリメントなどで単一の食物を多量にとると下痢を起こす場合があります。また、鉄、カルシウムや亜鉛などの吸収を妨げミネラル不足に陥る心配があります。
食物繊維を含むサプリメントが有効であることは認められていますが、研究結果からも一般的に、食品のかたちで接種したほうが効果が高いと言われています。精製されたものは過剰摂取にならないよう注意が必要です。
食物繊維の一日の摂取基準
食物繊維の食事摂取基準(g/日)
目標 量 | ||
年齢等 | 男 | 女 |
0~5(月) | ー | ー |
6~11(月) | ー | ー |
1~2(歳) | ー | ー |
3~5(歳) | ー | ー
|
6~7(歳) | 11以上 | 10以上 |
8~9(歳) | 12以上 | 12以上 |
10~11(歳) |
13以上 |
13以上 |
12~14(歳) | 17以上 | 16以上 |
15~17(歳) | 19以上 | 17以上 |
18~29(歳) | 20以上 | 18以上 |
30~49(歳) | 20以上 | 18以上 |
50~69(歳) | 20以上 | 18以上 |
70以上(歳) | 19以上 | 17以上 |
食物繊維を含む野菜(食品)
食物繊維を多く含む食品
1食当たりの目安量 含有量(g) | ||
野菜 |
ごぼう 1/2本(100g) |
5.7 |
菜の花 1/2束(100g) |
4.2 | |
ゆで竹の子 1食分(120g) |
4.0 | |
かぼちゃ 120g |
4.2 | |
果物 |
干し柿 1個 300g |
9.8 |
りんご 1個(300g) |
3.8 | |
その他 | いんげん豆(ゆで)
1/2カップ(70g) |
10.6 |
押し麦 2/3カップ | 6.7 | |
おから うの花いり
1食分 |
5.8 |
出典:栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版
最後に
前述しましたように食物繊維は、ある特定のものだけ抽出して大量にとっても効果は少ないと言われています。 効果が少ないだけでなく、ミネラルの欠乏など弊害も出てきます。
食物繊維は、通常の食品からでも十分、摂取が可能です。また、食物繊維は腸内微生物の働きにより分解されます。
腸内環境を良好にたもち、食物繊維を豊富に含んだ食生活は、健康にはもちろん、コレステロールや糖質の腸内からの吸収を妨げてくれるのでダイエットにも有効です。