百数十年前、顕微鏡が発明されました。その顕微鏡により、初めて乳酸菌などのバクテリアが発見されたのです。そのうちわずかな種類が病気の原因だったためにバクテリアは全部が悪者にされてしまったようです。
最近では、善玉菌、悪玉菌などと言って、私たちにとって悪い菌もいるが、乳酸菌などの良い菌も存在することが言われるようになってきています。
実際には「良い菌も存在する」というよりも、ヒトの体には細胞の数を上回るバクテリアが共存していて私たちを守ってくれています。乳酸菌などのバクテリアがいなくなれば人間など少しも生きていけないのです。
最近は乳酸菌ブームですね。売る側にとって都合の良い情報に惑わされ、一過性のブームで終わるのはもったいない材料です。
乳酸菌のことを詳しくしり、健康にはもちろんのこと、ダイエットなどの美容にも役立ててみませんか。
乳酸菌とビフィズス菌の違い
乳酸菌とビフィズス菌は正確には違うものですが、どちらも乳酸菌として呼んでいる場合が多いかと思います。ヒトの腸内の善玉菌のうち9割がビフィズス菌だと言われています。
主に代謝する物質
乳酸菌は、主に乳酸を代謝するのに対して、ビフィズス菌は乳酸以外に酢酸を代謝します。
菌の形
乳酸菌の形は棒状や球状であるのに対して、ビフィズス菌の形は、分岐した棒状であったり、棍棒上だったりします。乳酸菌の形は意外と重要です。ある学者は、「球菌などは血管内に入りやすく、炎症を起こす可能性がある」と言っています。
生息場所
- 乳酸菌の生息場所⇒ヒトや動物の腸管及び発酵食品(乳製品、漬け物)
- ビフィズス菌⇒ヒトや動物の腸管のみ
酸素に対する性質
- 乳酸菌⇒酸素化でも発育できる
- ビフィズス菌⇒酸素化では発育できない
乳酸菌に期待される効果
健康面
これまで消化とは「酵素が食べ物を分解して栄養を摂取することで、バクテリアの働きは副次的なもの」とされてきましたが、現在では血中の成分の36%がバクテリアの代謝物だという研究報告まで出ています。
乳酸菌などによる腸内環境の研究が今、医療を変えようとしています。世界中で国家プロジェクトが始動していて、最先端の遺伝子解析技術により新しい菌が発見され、糖尿病、肥満、アレルギーなど多くの病気で腸内菌とのとの関係が見つかっています。
・乳酸菌とピロリ菌の関係
ピロリ菌は、胃潰瘍・胃がんなどの一番の原因ということになっているのですが、ピロリ菌は、自ら作り出すウィリアーゼというアルカリ性の酵素によりヒトの胃酸の中でも住み続けられます。
乳酸菌は、そのウィリアーゼを食べてしまうのです。
・乳酸菌とパーキンソン病
神経伝達物質であるドーパミンは、過剰になると、幻覚や妄想などが現れ、不足すると、筋肉神経をコントロールできなくなり、頭が揺れるパーキンソン病の症状などが現れます。
このドーパミンのバランスなども乳酸菌などの腸内菌がコントロールしていることが分かってきています。
・乳酸菌とうつ病の関係
肉などのタンパク質系の食品を食べ過ぎると、未消化状態になります。すると、ウェルシュ菌や大腸菌がタンパク質を分解し、代わりに硫化水素やアンモニアをつくり出します。
ほとんどのアンモニアは、尿や糞便で出ますが、小腸や胃など消化道の上部で発生すると血液の中に入ります。血液中のアンモニア量が通常の2倍から3倍になると、『血液脳関門』を破壊してしまうと言われています。
その結果、認知症の人の脳の中を調べると、鉄やアルミが侵入しているようです。
・乳酸菌とアレルギーの関係
未消化のタンパク質は、アレルギーの原因とも言われています。タンパク質の分解能力の高い乳酸菌であればアレルギー対策にも有効なのです。
ダイエットなどの美容効果
「あの人、食べても太らないよね~」周りにそういう人、いませんか?
太りやすさ、痩せやすさは、人によって差があると感じている方も多いと思います。マウスに肥満の人の腸内菌を移植すると、そのマウスは同じように太るようです。
どんな腸内細菌の影響を受けているのかが肥満の鍵を握っているとも言えるのではないでしょうか。
・乳酸菌による脂肪燃焼
腸内細菌がつくり出す短鎖脂肪酸が、脂肪細胞に働きかけて脂肪を取り込んで巨大化するのを防ぐ、と同時に筋肉に作用し脂肪燃焼を促してくれます。
・エクオールと皺(しわ)の関係
腸内菌(乳酸菌)がつくるエクオールという物質があります。そのエクオールという物質を更年期の女性が飲むと、皮膚の皺(しわ)が浅くなると言われています。
・臭いの原因を排除
腸内環境が悪化し、悪玉菌が優勢になると、臭いの原因であるインドール・スカトール・硫化水素・アンモニアが生成されます。
乳酸菌による精神作用
アメリカの神経生理学者『マイケル・D・ガーション博士』は、脳に存在しているはずのセロトニン(神経伝達物質)の大半が腸で作られていることを見つけました。
・セロトニンの2つの働き
①自律神経のコントロール
自律神経とは意思とは関係なく、血管や内臓を働かせ、自動的に調整する神経です。
②人の精神活動をコントロールする
セロトニンが足りていれば、人は前向きになり、活発で明るく生きられます。
セロトニンの材料となるトリプトファンは、大豆、赤味の魚、チーズ、バナナ、アボガド、ケールなどに含まれます。
合成に必要なビタミン類は、乳酸菌が生成してくれます。
・ドーパミンの働き
前述のドーパミンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれます。また、運動や学習などへの興味を引き出す、と言われる有難い神経伝達物質です。
かと思うと、暴力事件の犯罪者はドーパミンの分泌が異常に高いことが分かっています。
タバコ、お酒、麻薬などはドーパミンの分泌を促しますが、中毒症状をおこし、止められなくなってしまいます。
この両刃の剣である『ドーパミン』の神がかったバランスは乳酸菌などの腸内菌に任せるのが一番安全なのです。
乳酸菌の敵は? 化学物質、薬?
保存料などの化学物質
加工食品などには、かなりの率で保存料などの化学物質などが入っています。化学物質は、乳酸菌にダメージを与え、死滅させてしまいます。製造側は、食中毒を起こされたら大変なので仕方ないのかもしれません。
ヒトは手間をかけない便利なものを求めます。しかし、腸内環境を考えると、そうも言っていられません。
薬の飲み過ぎ
「加齢とともにビフィズス菌が減ってウェルシュ菌が増える」というデータがあります。
原因は薬だと言われています。現在では、高齢になるにつれて沢山の薬を飲むひとが多くないですか? 抗生剤は、人間にとって悪い菌を殺しますが、乳酸菌やビフィズス菌も皆殺しです。腸内環境を考えたら乱用は避けなければなりません。
冷たい水などの飲料
人間は水が無ければ生きて行けません。夏に大量の汗をかくと、どうしても冷たい飲料が欲しくなります。乳酸菌などのバクテリアは低温に弱く、活動を停止してしまいます。乳酸菌は活発に増え続けなければ、アッと言う間にいなくなってしまいます。
いかに菌を取り除くか…いかに菌を殺すかの除菌ブームです。そんな中で乳酸菌ブームになっています。「矛盾しているな~」と思っていました。
先日、テレビで『乳酸菌が健康にどれだけ大切か~』という番組をやっていました。
その番組を見ていて感じたのですが、やたらコマーシャルが多いのです。しかも驚いたことに、その番組の提供が除菌薬品の会社ばかりだったのです。偶然だと思いますが、矛盾を感じないのかと不思議でした。
除菌イコール私たちにとって大切な乳酸菌などを殺すことに他なりません。行き過ぎた殺菌は自傷行為と同じなのです。
乳酸菌のことをしり、健康にはもちろんのこと、ダイエットなどの美容にも役立ててください。