ヒトの身体は、すべて食べたものからできています。さまざまな栄養素が大切な役割をしてくれています。その役割を知ることは生きる上でとても大切です。
意外と知られていないマグネシウム。マグネシウムがなぜ大切なのかをお伝えします。
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マグネシウムの効果(働き)とは?
マグネシウムはヒトの体内に25gほど存在します。そのうち、骨に65%、筋肉に27%、その他の組織に7%、細胞外液中に1%に分布しています。
骨に弾力性を与える
マグネシウムは、カルシウム・リンとともに骨を構成し、骨の成分はリン酸カルシウム(水酸化リン酸カルシウム)ですがマグネシウムは、その結晶の中に存在します。
体内のミネラルバランスをコントロールする
マグネシウムは、同じ2価イオンであるカルシウムと拮抗作用があり、カルシウムの作用を阻害して、神経や筋肉の興奮を抑えたり、血管の収縮を抑制し、血圧を下げる作用もあります。
エネルギー産生をスムーズに行う
生物はエネルギーが無ければ即、死につながります。ガソリンが切れた車と同じです。車はガソリンを入れれば、また動き出しますが、人間はそうは行きません。終りです。マグネシウムは、そんなエネルギーをつくり出す重要な仕組みの一部になっています。
マグネシウムは、多くの酵素の因子として代謝反応に関係します。とくにATPとの結合が強く、ATPの作用を助けます。
ATPとは?
ATPとは、adenosine triphosphateの略で、日本語でアデノシン三リン酸といいます。
アデノシンに3つのリン酸がつながったもので、そのうち端から2つが高エネルギーリン酸結合しているため、加水分解されて、リン酸が1つとれてADP(adenosine diphosphate アデノシン二リン酸)、さらに1つとれてAMP(adenosine monophosphate アデノシン一リン酸)になるときに大きなエネルギーが解放され、生命活動のエネルギーとして利用される
体内のマグネシウムが不足すると?
不整脈などを引き起こし、虚血性の心疾患
マグネシウムが不足すると、骨粗しょう症、心疾患、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる可能性が言われていて、はっきり解明はされていないが、
糖や脂質代謝、細胞内の機能など、マグネシウムの多くの作用に関係していると考えられています。
骨から溶け出す
「骨はマグネシウムの貯蔵庫」と言われています。細胞外液中のマグネシウム濃度が低下すると、骨から溶け出して血漿や細胞外液の濃度を一定に保ちます。
マグネシウムの摂取基準(mg/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量注 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量注 |
0~5 (月) | – | – | 20 | – | – | – | 20 | – |
6~11 (歳) | – | – | 60 | – | – | – | 60 | – |
1~2 (歳) | 60 | 700 | – | – | 60 | 70 | – | – |
3~5 (歳) | 80 | 100 | – | – | 80 | 100 | – | – |
6~7 (歳) | 110 | 130 | – | – | 110 | 130 | – | – |
8~9 (歳) |
140 | 170 | – | – | 140 | 160 | – | – |
10~11 (歳) | 180 | 210 | – | – | 180 | 220 | – | – |
12~14 (歳) | 250 | 290 | – | – | 240 | 290 | – | – |
15~17 (歳) | 300 | 360 | – | – | 260 | 310 | – | – |
18~29 (歳) | 280 | 340 | – | – | 230 | 270 | – | – |
30~49 (歳) | 310 | 370 | – | – | 240 | 290 | – | – |
50~69 (歳) | 290 | 350 | – | – | 240 | 290 | – | – |
70以上(歳) | 270 | 320 | – | – | 220 | 270 | – | – |
妊婦(付加量) | 30 | 40 | – | – | ||||
授乳婦(付加量) | – | – | – | – |
注 通常の食品以外からの摂取量の耐用上限量は成人の場合350mg/日、小児では5mg/kg体重/日とする。それ以外の通常の食品からの摂取の場合、耐用上限量は設定しない。
出典 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2015年版)』
マグネシウムの便秘との関係
酸化マグネシウム
古くから酸化マグネシウムは便秘薬として使われています。
酸化マグネシウムは、腸内で胃酸や膵液と反応することで塩分濃度を高め、浸透圧により腸管から腸内へ水分を移動させ、便をやわらかくします。
「繰り返し使用しても効果が弱まることがない」と言われているようですが、ごくまれに、高マグネシウム血症との因果関係が否定できない事例もあります。
長期投与する場合には、高マグネシウム血症の初期症状に注意することや、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなどが必要です。
注意する初期症状
・悪心
・嘔吐
・口渇
・血圧低下
・除脈
・皮膚潮紅
・筋力低下
・傾眠など
マグネシウムの過剰は?
前述のように健康食品やサプリメントでは摂り過ぎになる可能性も完全には否定できないようです。しかし、前項の表に上限量が記載されていないように、マグネシウムは食品から摂り過ぎることはありません。
マグネシウム:カルシウム=1:2の摂取バランス
米国公益法人ライフサイエンスアカデミー理事長 山田豊文氏
「老けない体のつくり方」宝島社より
骨の健康にはカルシウム。多くの人が、なんの疑いもなく信じている健康知識です。
カルシウムは骨に限らず、体のさまざまなところで働いていますが、骨はそんなカルシウムの貯蔵庫としての役割も担っています。
本来は必要に応じて骨から血液に放出され(脱灰)、役割を終えたら再び骨に戻る(再石灰化)というシステムで、カルシウムが全身で正しく機能しています。そして、骨以外の場所の細胞側でもカルシウム濃度が厳重にコントロールされていて、カルシウムが体に害を及ばさないようになっています。
このどちらの働きにも欠かせない栄養素がマグネシウムです。マグネシウムが不足すると、「脱灰」と「再石灰化」や、カルシウム濃度のコントロールがうまく機能しません。すると、血中のカルシウム濃度が上がり、血管内や臓器の細胞など、骨以外の場所に居座ってしまうのです。
マグネシウムが多く含まれる食品
マグネシウムは、大豆や未精製の果実や穀類、海産物に多く含まれます。
日本における食材は、もともとマグネシウムを含むものが多いのですが、最近では白米や食パンなど精白したものが当たり前になっていることで一昔前の状況とは一変しています。
含有量 mg | 豆・大豆製品 | 種実 | 海藻 | その他 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
大豆 30g | 油揚げ 大1枚 40g | 納豆 1/2パック | アーモンド 30g | カシューナッツ 30g | いり落花生 30g | 干しひじき 10g | 乾燥わかめ 5g | 玄米ごはん 1杯 120g | 干しえび 10g | |
66 | 52 | 50 | 93 | 72 | 60 | 62 | 55 | 59 | 52 |
出典『栄養の基本がわかる図解辞典』成美堂出版
マグネシウムは環境に優しい洗濯用品にも使われている
ある金属加工の町工場が画期的な商品を開発して話題になっています。テレビ東京の人気番組『ガイアの夜明け』で取り上げられ、最近主婦の間で大人気です。商品名は『洗濯まぐちゃん』です。
洗濯用洗剤の代わりとして、マグネシウムだけで、化学反応により、洗濯してくれるというものです。『洗濯まぐちゃん』はなぜそれほどまでに話題になったのか?特徴は次の通りです。
・マグネシウムがアルカリイオン水を生成
高純度99.95%のマグネシウムが洗濯層の中でアルカリイオン水を生成し、水と油を混ざり合わせることにより汚れが落ちる。高純度は金属会社ならではの技術。
・経済的
5kgの洗濯物に対して2個(1個1,944円)使用。終わったら干して乾かせば300回使用できます。洗剤無し。
・すすぎながらも洗浄
すすぎの水もアルカリイオン水になるのですすぎながらも洗濯そうやホースまで汚れを落とす
・消臭、洗浄、除菌力
部屋干しや加齢臭対策にも効果があるようです。また、大腸菌の添加試験では、まぐちゃんを入れたほうの水は、28時間後に大腸菌はほとんど死滅、に対して水道水のみのほうの水は、時間とともに大腸菌が増えて行きます。
・流した排水で植物も元気に
マグネシウムは植物の光合成に不可欠。汚れ成分の有機物といっしょに植物を元気にしてくれます。
ヒトの健康にも重要で、環境にも大切なマグネシウム。おわかりいただけましたでしょうか。