「こむら返りを経験したことが無い」という人はあまりいないと思います。
あの何とも言えない痛み、「このままずっと、足を真っ直ぐ延ばせなくなってしまうのではないか…」という恐怖を感じた人は多いのではないでしょうか?
こむら返りが頻繁に起きる場合は、何らかの他の病気が関係している場合もありますが、ほとんどは、他に原因があるようです。とは言え、こむら返りは実際に起きると大変です。ひどい時は、繰り返し発症して、「朝まで眠れない」なんてこともあります。
こむら返りが起きた時の対策、また、今後、こむら返りを起こさないための予防策を知ることはとても大切です。
こむら返りとは?
こむら返りの『こむら』とはふくらはぎのことをいい、こむら返りというのはふくらはぎの筋肉が痙攣して、過剰に収縮し、硬くこわばった状態をいいます。
こむら返りは、ふくらはぎが痙攣を起こす場合が多いので、こむら返りというそうです。実際には「足がつった!」などとも言い、太もも、すね、足の甲や指などの筋肉でも起こります。
こむら返りは、脳からの指令が足の運動神経にうまく伝わらず、筋肉が収縮したままになってしまう状態といわれていますが、はっきりした原因は分かっていないようです。
こむら返りは、激しい運動や水泳中などによく起こります。テニスなどではプロの選手が試合中に、こむら返りに襲われる姿をよく見かけます。
ところが高齢であったり、運動不足の人はウォーキングやサイクリングの時でもこむら返りに襲われることがあります。また、夜、テレビを見ていたり、寝ている時にも突然、発症するのが特徴です。
こむら返り、考えられる原因
電解質のバランスの乱れが原因のこむら返り
こむら返りは、電解質のバランスの乱れが原因だといわれています。電解質というのは水に溶けると、電気を通すミネラルのことをいいます。代表的なミネラルは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムです。
これらのミネラルは神経の情報伝達や、筋肉の収縮に欠かせません。
・カリウムの働き
細胞内の酵素反応を調節する働きがあり、エネルギー代謝をスムーズに行わせ、細胞が正常に活動する環境づくりを行います。
・カルシウムの働き
細胞の情報伝達、筋肉の収縮、神経の興奮を抑えます。こむら返りは神経の興奮状態です。
・マグネシウムの働き
筋肉の収縮、神経の興奮を抑えます。また、多くの酵素をサポートし、エネルギーをスムーズにつくり出します。こむら返りはエネルギーの不足状態です。
・ナトリウムの働き
カリウムとのバランスにより、細胞内外のミネラルバランスを常に一定に保ちます。
冷えが原因のこむら返り
人の身体は、血流によりエネルギーの元になる酸素などが運ばれ、またいらなくなった老廃物が回収される仕組みになっています。身体が冷えると、交感神経優位になり血流が縮小されます。
血流が悪くなると、老廃物も溜まり、傷んだ筋肉細胞の修復も進まず悪循環に陥ります。
疲労によるこむら返り
他の原因も関係してきますが、疲労というのは、痛んだ筋肉細胞の代謝が滞っている状態です。冷えによる血流不足でも代謝は阻害されるし、ミネラル不足によっても代謝は進みません。
こむら返りは、自身のそれらの回復能力以上に疲労した状態ということが言えるのではないでしょうか。
何らかの病気が原因で起こる、こむら返り
いろいろな場所でこむら返りが頻繁に起こる場合は、他に病気があるということも考えられます。その場合は、病院に行って検査してもらうことも必要かもしれません。主に次のような病気が考えられるようです。
- 糖尿病
- 肝機能障害
- 甲状腺機能低下
- 腎疾患
- 脊柱管狭窄症
- 閉塞性動脈硬化症
- 脊髄性筋委縮症
- 下肢静脈瘤
次のような薬の副作用による場合もあるようです。
- 高血圧治療薬
- 抗甲状腺薬
- 利尿剤
運動不足によるこむら返り
運動不足はこむら返りの原因になります。こむら返りが高齢者に多いというのも同じ理由が考えられます。
運動不足は、筋肉量の低下につながります。そして筋肉量の低下により代謝が下がります。また、前述のように筋肉は血流も促進するので、逆に筋肉量の低下は低体温にもつながり、筋肉細胞の代謝は悪循環になってしまいます。
運動不足によるこむら返りにはストレッチが一番
ストレッチはこむら返りの予防にとても役立ちます。運動して筋肉をつけることが大切なのですが、激しい運動は逆にこむら返りの原因にもなってしまいます。
高齢になってくると、代謝が下がり、筋肉の修復がおいつかなくなってきます。結果、筋肉が固くなって、関節が曲がりづらく、あちこち痛くなってしまうのです。
筋肉が固くなると血流が悪くなるので筋肉細胞の修復が間に合わなくなってしまうのです。
子供の時は、どんなに寝相が悪くても寝違いなどしません。しかし、大人になると変な格好で寝てしまうと、次の日が大変な事になってしまいます。
こむら返りは、治まってしまえば痛みを忘れてしまうほど、何ごともなかったような状態になります。しかし、筋肉はダメージを受けているので無理に伸ばすのは良くないです。
発作時は筋肉を軽く伸ばしたり、さすってあげることが重要です。温めるのも良いでしょう。長くても数分で収まるので、それを何とかするというよりも予防が大切です。
こむら返りを予防する8つのストレッチ
- 足の指を伸ばす
- 足の甲を伸ばす
- 土踏まずの筋肉を伸ばす
- アキレス腱を伸ばす
- ふくらはぎの内側の指圧
- ふくらはぎの中央部の指圧
- ふくらはぎの外側の指圧
- 前側の太もも(大腿四頭筋)を伸ばす
足の指を伸ばす
足の指を1本1本伸ばします。あぐらをかいて左足の時は、右手で指を引っ張り、右足の時は、左手で指を引っ張ります。各5秒間くらい続けると良いでしょう。
足の甲を伸ばす
足の甲を両手を使って、足の指側と足首側に引っ張ります。やはり5秒以上続けます。
土踏まずの筋肉を伸ばす
土踏まずの筋肉を両手を使って伸ばします。
アキレス腱を伸ばす
立って壁に両腕をつき片方の足を1メートルほど後ろに下げ、その足の裏を地面につけます。交代で左右両方のアキレス腱を伸ばします。この時、10秒くらい持続します。
ふくらはぎの内側の指圧
ふくらはぎの内側と、すねとの間を かかとから膝にかけて5cm置きに、両手のの親指を重ねて指圧します。1か所5秒以上指圧します。
ふくらはぎの中央部の指圧
ふくらはぎの中央部も内側と同じように、アキレス腱の上から膝の裏にかけて5cmおきに指圧します。
ふくらはぎの外側の指圧
ふくらはぎの外側と骨との間も内側の時と同じようにかかとの上から膝にかけて5cmおきに指圧します。外側は、両手で押すのはむずかしいです。ご家族にやってもらうことをおススメします。
前側の太もも(大腿四頭筋)を伸ばす
太ももの後ろ側の筋肉(大腿二頭筋)を伸ばす体操はよくやりますが、太ももの前側の筋肉を伸ばすことはあまりしません。この筋肉を伸ばすには正座するのが一番です。以前は「正座というのは足にはよくない」と言われることがありましたが、最近では違ってきています。実際に膝のよくない人が、正座をすることでよくなったという話をよく聞きます。
ストレッチもやり過ぎると、交感神経優位になってしまうので、ストレスになるほどするのは逆効果です。
血流が緩やかに上がると、人は気持ちが良いと感じます。「気持ち良いのでやりたくなる」という線が一番です。
足は健康のバロメーター
寝たきりの人の一番の望みは『自分の足で歩く』ことだそうです。日本は長寿国と言われますが、寝たきりの人を除く『健康長寿』ということになると、それほどの長寿国でもないようです。
こむら返りは、自身の身体を大切にしているかどうかの、身体からのメッセージではないでしょうか?
こむら返りが起きたら、それをチャンスと考え、そのこむら返りの原因を考え、予防に努めれば、大切な足が最後まで働いてくれるはずです。
ふくらはぎは『第二の心臓』とも呼ばれています。歩くだけではないのです。こむら返りをきっかけに、「健康について考える!」大切なことではないでしょうか?