「昔四十肩、今五十肩」といわれるそうです。どういうことかというと、昔は50歳位からその痛みを訴える人が多かったのに、最近では40歳でその肩の痛みを訴える人が多くなってきたということだそうです。
昔と比べて人間の寿命は延びています。しかし、五十肩に限らず、老化などから起こる身体の不調は若返っているようです。不思議ですね。考えられるのは食生活や運動不足など生活の変化ではないでしょうか?
痛みというのはやっかいなもので、本人は辛いだけではなく日常生活も不便になります。しかし、周りの人には、その辛さをなかなか分かってもらえません。
五十肩というものを知って、自分の力で予防や治療ができれば、それに越したことはありません。五十肩の辛さや不便さから逃れることに少しでもお役に立てたら幸いです。
五十肩とは?
五十肩とは四十肩ともいい、肩関節の周囲に起こる炎症のことです。強い痛みと肩の運動範囲が制限されてしまいます。従来は鍵板(けんばん)損傷や石灰沈着性鍵盤炎も含めていたが、近年では原因の分かっているものは五十肩に含めないようです。
肩鍵盤損傷とは?
肩は三角筋という筋肉で覆われています。その下の層に上腕骨頭(こっとう)を取り囲む腱の複合体があり、その腱を腱板といいます。
肩を打ちつけたり、加齢などで腱板が劣化することでこの腱板が切れることがあります。それを肩腱板損傷といいます。
石灰沈着性腱板炎とは?
肩腱板の表層や腱板の上腕骨付着部に石灰が生じる病気です。
五十肩とは、40歳以降におこり、肩の痛み、運動障害を起こる原因不明のものです。五十肩は筋肉ではなく、関節に生じるもので肩こりとは異なります。
自分では肩を動かすことはできないが、人から動かされると動くという場合は五十肩とは言わないということです。
また、肩の痛みで腕が上がらないと訴える患者のうち五十肩と診断される割合は25%と言われています。なかなかよくならない場合はお医者様に診てもらって下さい。
五十肩の症状
五十肩の急性期と慢性期
・五十肩の急性期
ある日突然、腕を動かした時に、片側の肩のみにするどい痛みが発生します。その後、肩を動かすたびに痛みが二の腕や手先に伝わるようになります。しびれを伴うこともあるそうです。
夜中にズキズキ痛み、眠れない時もあるほどですが、急激な痛みは数日間で治まります。
・五十肩の慢性期
急性期の痛みが治まるとともに、強い痛みから鈍い痛みへと変化し、肩を動かせる範囲がだんだん狭くなってきます。拘縮(こうしゅく)といって、とくに腕を上げたり、後ろに回す動きが困難になってきます。
痛みを恐れて筋肉をうごかさないでいると、組織の癒着(ゆちゃく)が起こり、ますます動かなくなります。
五十肩を自分でチェック
次のような症状がある方は五十肩の予備軍かもしれません。
- シャツを脱いだり、着たりするのが痛くてつらい
- 両腕を前から真上に上げるのがつらい
- 手のひらを上に向け、両腕を真横から真上に上げると痛む
- 両手を後ろのポケットに入れづらい
- 両手を頭の後ろで組むのがつらい
- 両腕を上げて、背を向けて壁に寄り掛かった時、背中は壁につくが腕が壁つけられない
五十肩の原因
五十肩を発症しやすい条件
五十肩の原因は明らかになっていませんが、次のようなことが言われています。
①左右の五十肩の発生率に違いがない
②仕事やスポーツで若い時に肩を酷使し、痛めたことのある人は五十肩を発症しやすい 猫背など体にゆがみがある人は五十肩を発症しやすい
③睡眠不足や偏った食事による肩の血行不良が五十肩を発症しやすい
五十肩の原因ははっきりしないが、痛みの原因はわかっている
・直接要因
肩の周辺の組織が固くなったり、縮んだりの変化が起こることにより炎症を引き起こします。詳しくは次のようなことが言われています。
- 肩関節は、上腕骨、肩甲骨、鎖骨の三つの骨で支えられ、肩を大きく動かすために、上腕骨頭のはまりが浅くなっている。骨だけでは構造的に不安定なところを関節包や発達した腱板が強度を高めているので酷使によって炎症が起こりやすい。
- 加齢により、関節周辺の靭帯や腱板などが変性して、炎症を起こす。
- 血液循環の悪化による
- 肩関節の動きを良くする袋、肩峰下滑液包(かたほうかかつえきほう)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなる
・間接要因
生活習慣やストレス、ホルモンバランスの変化が五十肩の原因ではないか?
とも言われています。
①糖質の摂り過ぎ
「生活習慣の低下」でまず第一に考えられるのが糖化です。現代人は、糖質を摂り過ぎる傾向があります。パン、パスタ、白米、お菓子など。
②糖化とは?
糖化とは、身体の中でエネルギーに変換されなかった糖質が、人のカラダを構成しているタンパク質に結びつくことによってAGEs(エイジス/Advanced Glication Endproductの略)という物質が創り出されることをいいます。
糖化とは発見した博士の名前をとってメイラード反応とも呼ばれます。
AGEsは最終糖化産物と呼ばれ、強い毒性を持ち、ヒトの老化現象や健康に係る物質として、注目されてきました。
タンパク質は、糖と結びつくことによって糖化が進むと、本来の働きを失います。よって、糖化は、タンパク質でできている筋肉や腱などを劣化させてしまいます。
③睡眠不足
生活習慣の低下には睡眠不足が含まれます。睡眠不足は肉体的ストレスで、精神的ストレスとともに交感神経を刺激します。交感神経が刺激され続けると、白血球の顆粒球が増大します。よって身体が炎症を起こしやすい状態になってしまうのです。
五十肩の安全な治療法
五十肩に効くツボ
・中府(ちゅうふ)
- 位置
鎖骨の下側で一番肩側から指2本分中央に移動したくぼみ- 刺激の方法
・ボールペンなど細い棒状のもので5~6回押す
・蒸しタオルで温める- 5秒ほどかけて、ゆっくりと息を吐きながら指で押し、5秒ほどかけてゆっくりと息を吸いながら指の力を抜いていく
・陽池(ようち)
- 位置
左右の手の甲にある手首の関節のくぼみの中央- 刺激の方法
親指で5~6回押す- 腕や肩の血行を促進し、五十肩の痛みを和らげる
五十肩を温めて治療する
・夏でも湯ぶねにつかり身体を温める
最近は、シャワーで済ませて湯船につからないという人が増えているそうです。
しかし、お湯につかる効果は実は思っているより大きいのです。
- 体を温めると血流が上がる
- 身体を温めると筋肉や腱などが柔らかくなります。
- お湯につかると、副交感神経が優位に働き、リラックスできます。
「夏は暑いのでお湯につからない」という人がいますが、実は夏こそ身体は冷えています。今や夏になると、建物内部はエアコンが当たり前です。とくに汗をかく人は思いのほか冷えています。
・ウォーキングなど運動で身体を温める
運動は身体を温めてくれるだけでなく、血流も上がり、固まってしまった肩の患部には最適です。
また、軽いダンベルを使った運動や、壁を押したりする肩に少し負荷をかける運動も有効だと言われています。
軽い運動は、交感神経の興奮状態も緩めてくれます。
・温熱療法で五十肩の痛みを軽減
温めた濡れタオルを患部にあてる局所的なものも意外と効果があります。湯たんぽなどを使っても良いでしょう。
・ストレッチで五十肩を軽減
直接、肩の可動域を広げるストレッチは当然有効ですが、急性期の痛みがひどい時は炎症が悪化してしまうのでやめて下さい。酷い痛みが引いた後は、多少痛くても続けることが大切です。
・マッサージで患部をほぐす
肩のマッサージは自分ではむずかしいので、身近な人にやってもらうことが必要です。できれば専門家にやってもらうのが良いでしょう。
その時に、痛いと思いますが、肩甲骨の辺りの筋肉の指圧が意外と有効です。
まとめ
若いころは、腕を下敷きに寝ていようが、首がベッドから落ちていようが、それほど問題にはなりませんでした。幼児がとんでもない寝相で寝ているのを見たことありませんか?子供は、次の朝、「首が痛い!」「背中が痛い!」と言って泣いたりしないでしょう。
しかし、40歳以上になるとそうは行きません。寝相が悪いと、寝違えて数日首が回らなかったり、肩が上がらなくなったり。
「そんな経験ない!」という人は、おそらく五十肩にはならないでしょう。実年齢よりもお若い健康な人です。
筋肉などは身体の老化(老化は年齢だけの問題ではありません…)とともに固まりやすくなってきます。激しく負担をかけた後はなおさらです。筋肉を修復する作用によって起きてしまいます。日常、特別何をやっている訳ではなくても身体に負担をかけています。
年齢がかさんできたら、身体のケアを意識しなければなりません。ありがたいもので、身体というのは自分でケアできるのです。
軽い運動、ストレッチ、お風呂などで温めることによって血流が体を修復してくれます。ただし、修復してもらうためには栄養という材料が必要です。ですから食べる物が大事になってくるのです。