完全食『玄米』
「玄米を食べるということは、生命の基を食べるということ」森下敬一先生は言います。この玄米の条件は、水分や温度などの適度な条件を与えると発芽する玄米です。
もともとお米は、栄養の宝庫です。食べやすくするために胚芽などのもっとも栄養のある部分を取り除いてしまっています。
私達の身体はすべて食べたものから出来上がっています。改めてその事を思い起こし、「玄米」について知ることは、健康で若々しい身体を取り戻すためにとても重要なことではないでしょうか。
玄米の有効成分
玄米お胚芽は有効成分の宝庫です。次のような栄養素が含まれています。
ビタミンB1
ビタミンB1は、補酵素として、私たちの身体の中で糖質をエネルギーに変える働きがあります。エネルギーの大半を白米などの糖質から摂る私達日本人にとっては、とても重要なビタミンということになります。
ビタミンB1が不足すると、糖質の代謝が行き詰まり、その結果、乳酸やピルビン酸などの疲労物質が溜まり、疲労や筋肉痛の原因になります。
ビタミンB2
- ビタミンB2には、補酵素として脂質、糖質、タンパク質をエネルギーに変えるという働きがあります。
- ビタミンB2は、『発育のビタミン』とも呼ばれ、成長を促進したり、皮膚、髪、爪などの細胞の再生にも関与します。
- ビタミンB2には、私達の身体にとって有害な過酸化脂質を分解して消去する働きがあります。この時、ビタミンB2はグルタチオン・ペルオキシダーゼという酵素とともに働きます。
ビタミンB6
- ビタミンB6は、分解されたアミノ酸が私達の体特有のタンパク質に再合成されるのを補酵素の成分として働き、皮膚、髪、歯などの健康維持に役立っています。
- ビタミンB6は、脂質の代謝をサポートし、肝臓に脂肪が蓄積することをセーブします。
- ビタミンB6は、重要な神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン、アドレナリン、α-アミノ酪酸(ギャバ)の合成に必要なビタミンです。
ビタミンE
- 細胞膜を構成するリン脂質には不飽和脂肪酸が多く含まれ、これが酸化すると過酸化脂質が生じ、細胞が傷ついて老化が進みます。ビタミンEは、強い抗酸化力を持ち、細胞膜に存在し、有害な過酸化脂質の生成を防いでくれます。
- ビタミンEには、末梢血管を広げ、血行を良くする働きがあるので、血行障害が原因である肩凝り、頭痛、冷え性などの改善効果が期待されています。
ニコチン酸
- ニコチン酸は、補酵素として糖質、脂質、タンパク質からエネルギーをつくりだす働きをします。
- 二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する時の補酵素として働きます。
パントテン酸
- パントテン酸は、補酵素であるコエンザイムAの構成成分として、3大栄養素である糖質、脂質、タンパク質からエネルギーをつくり出します。
- パントテン酸は、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やしたり、副腎皮質ホルモン、神経伝達物質の合成、免疫抗体の合成、薬物の解毒作用などの働きにも関与しています。
コリン
- コリンは、細胞膜や神経組織を構成するレシチンや神経伝達物質のアセチルコリンの材料となる物質です。
- レシチンには血管壁へのコレステロール沈着や肝臓に脂肪がたまるのを防ぐ働きがあり、アセチルコリンには血管を拡張する働きがあるため、コリンには動脈硬化や脂肪肝、高血圧の予防効果が期待されます。
プロビタミンC
ビタミンCは、強い抗酸化力があるが不安定で分子構造が壊れやすいのですが、プロビタミンCは、生体内で酵素反応により、ビタミンCになります。
ビタミンCは、皮膚、腱、軟骨などの結合組織を構成するコラーゲンの合成に不可欠です。このためビタミンCは、皮膚や骨の健康を維持したり、傷を修復するのに欠かせません。
カルシウム
体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%を占めていて、このうち99%は、骨や歯などの組織に存在しています。骨の中では新しい骨をつくる骨形成と古くなった骨をこわす骨吸収が繰り返されているが、カルシウムはこの骨代謝にも最も関与しています。
残りの1%はすべての細胞に分布し、血液凝固、筋肉収縮、神経の興奮の抑制や細胞の機能調整を行ったり、ナトリウムを排泄して血圧上昇を防いだりしています。
リノール酸
体内で合成することができない必須脂肪酸の一つで、血液中のコレステロールを低下させ、動脈硬化を予防する働きがあります。
白米の問題点
玄米から胚芽が取り除かれているため、ビタミンB1が不足して、炭水化物の代謝障害が起こり、次のような症状が出ます。
- 疲れやすくなる
- 肥満になる
- ノイローゼになりやすい
- 頭の働きが鈍る
- 気力がなくなる
『江戸わずらい』は、胚芽欠乏症が原因の『脚気』ということです。
脚気とは?
症状
全身の倦怠感、食欲不振、手足のしびれ、足のみくみ 末梢神経や中枢神経が侵され、足もとががおぼつかず、心不全を起こし死に至ることもあります。
※通常、椅子に座って膝の下をたたくと足が跳ね上がります。これを膝蓋腱反射といいますが、この反射が起こらない場合は『脚気』の疑いがあります。
江戸わずらい
江戸時代、それまで身分の高い人しか食べられなかった白米食が広がりました。その時、地方ではまだまだ玄米食が中心だったそうです。江戸を訪れた地方の大名や武士に体調を崩す者が多くなりました。
しかし、その人達も故郷に帰るとすっかり治ってしまう人が多く、その病は『江戸わずらい』と呼ばれました。
後に、その病気はビタミンB1不足が招いた『脚気』であることが判明しました。胚芽部分に圧倒的に多いビタミンB1が精米することによって取り除かれてしまったのです。
胚芽部分を取り除いた白米は大部分は炭水化物で糖質です。しかも当時の人は一汁一菜が基本で、ご飯を大量に食べました。ということで、ますますビタミンB1が不足してあまったということですね。
統計がある明治3年以降、東京などで『脚気』が流行し、乳児まで含めると、毎年1万から3万人の人が亡くなったようです。
麦飯を食事に取り入れることで克服したと言われています。
玄米が有効な人
- 夏バテしやすい人
- お乳の出が悪い人
- 肌のハリがなくなった人
精力減退気味の人
抗公食品でもある玄米は健康に欠かせない万能食品
- 玄米は腸の働きを健全化して、公害物質(農薬など)の吸収を阻止してくれます。
- 胚芽に含まれるフィチン酸が体内に侵入した公害物質をつまみ出してくれます。
フィチン酸
細胞の酸化を防いで、ガン細胞の発生と増殖を抑える効果があります。また、血液が凝固しにくくなるため、血栓予防効果もあります。
白米と比べると少し固くて食べづらい面もありますが、よく噛んで食べれば、万能なスーパーフードなのです。
参考:農林水産省HP
森下自然医学
栄養の基礎がわかる図解辞典