特に子供の頃は、「出汁って何のために摂るのだろう!」って思っていました。そんなに手間をかけるほど何かが変わるのか…と。
しかし、健康に関する勉強のため、食材などを知れば知るほどその大切さが分かってきました。特に、日本の出汁というもののすばらしさ、ありがたさに感動します。
出汁とは?
昆布や鰹節などの食品を煮だし汁で、「煮出汁(にだしじる)」の略で、「出し汁(だしじる)」「にだし」ともいうとされています。
出汁は元になる食材により、次のようなうま味成分からなります。
グルタミン酸
グルタミン酸は、植物に多く含まれる成分で、海草、大豆、小麦粉、ピーナッツ、昆布、トマト、タマネギ、アスパラガス、ブロッコリー、グリーンピース、チーズ、緑茶、マッシュルーム、ビーツなどに含まれます。
また、母乳にも含まれ、赤ちゃんにとっては、初めてのうま味成分との出会いで、体に必要な栄養素であることを知らされます。
イノシン酸
イノシン酸は、動物に多く含まれる成分です。
私たちの遺伝子、DNA、RNAの構成成分ということで重要です。
煮干し、かつお節、サバ、鶏肉、豚肉、牛肉などに多く含まれます。
グアニル酸
グアニル酸は、干しシイタケに含まれ、他の食材と比べてダントツに含まれています。その他は、のり、ドライトマト、乾燥ボルチーニ茸などに含まれます。
出汁(だし)いろいろ
中国料理
中国料理では出汁を鶏肉、鶏ガラ、鶏骨、豚肉、中国ハム、貝柱、海老などを材料として作ります。
日本料理
日本料理では、昆布からグルタミン酸、削り節など魚介類からイノシン酸、椎茸からグアニル酸などを単独で又は組み合わせて出汁を摂ります。
※精進料理では、コンブ、椎茸の他に大豆、もやし、六条豆腐(塩蔵した乾燥豆腐)などを用います。
※吸い物に用いる一番だしや、下味を付けたり汁物に用いる二番だしなどを用途によって使い分けます。
・あわせだし
特に昆布と鰹節など複数の食品からとります。
一番だし ⇒ 主に吸い物に用いる
鍋に水2リットルと昆布20グラムを入れて煮て、沸騰直前に昆布を取り出しま
す。鰹節30グラム入れたら火を止め、鰹節が沈んだら漉します。
二番だし ⇒ 汁物など様々ニ用いる
鍋に2リットルと、一番だしで用いた昆布と鰹節を入れて煮、沸騰したら火を
止めて漉します。おいがつおを加える場合もあります。
・精進出汁
肉が禁じられた精進料理に使われる出汁です。
精進出汁は、昆布、干し椎茸、かんぴょう、大豆、小豆などを水につけたり煮たりして摂ります。
・八方出汁
八方だしは、だしに塩で味をつけたもので、醤油とみりんで味を付ける場合もあるそうです。下味を付けたり、煮炊きに使います。
・関東風そばつゆだし
主に関東において蕎麦つゆに使うだしです。
沸騰した湯の中に、鰹節やソウダガツオの削り節などを入れて、1時間ほど煮だしてから絞り漉します。このだしに醤油と砂糖のみりんのかえしを入れてつゆになります。
・関西風うどんつゆのだし
主に関西でのうどんつゆで使うだしです。
関西風うどんつゆのだしは、昆布を煮て、しばらく沸騰してから取り出します。鰹節にサバ、ウルメイワシの削り節のブレンドを加えて煮だして漉し搾ります。この出汁にかえしを入れてつゆをつくります。
※かえし(返し)とは?
醤油、本ミリン、砂糖を合わせた調味料をいいます。
ユネスコ無形文化遺産に登録された和食
和食は「和食;日本人の伝統的食文化」と題して、2013年2月にユネスコに登録されました。「日本人が抱く、“自然の尊重”の精神を体現した食に関する社会的慣習」と説明されています。
登録申請の概要は次のとおりです。
多用で新鮮な食材とその持ち味の尊重
・明確な四季と地理的な多様性により、新鮮で多様な山海の幸を使用
・食材の持ち味を引き出し、引き立たせる工夫
栄養バランスに優れた健康的な食生活
・米、味噌汁、魚、野菜・山菜などのおかずなどにより食事がバランスよく構成
・動物性油脂をあまり使わず、長寿や肥満防止に寄与
自然の美しさや季節のうつろいの表現
・料理に葉や花などをあしらい、美しく盛り付ける表現法が発達
・季節にあった食器の使用や部屋のしつらえ
年中行事との密接な関わり
正月を始めとして、年中行事と密接に関わった食事の時間を共にすることで、家族や地域の絆を強化
※ユネスコ文化遺産とは?
・「無形文化遺産」とは、芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地や歴史や生活風習などと密接に関わっているもののこと
・ユネスコの「無形文化遺産保護条約」では、この無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、登録制度を実施
・2010年には、「フランスの美食術」などの食に関する無形文化遺産が登録
和食の神髄は出汁?
日本の出汁というものは、日本食における位置づけとして、かなり上位にあるものなのではないでしょうか。目立たず、主役の食材を引き立たて、場合によってはそれを別物に変えてしまうほどの存在です。
断食をした後などに感じます。復食ではもちろん、消化のよくない物や、脂っこいものなど重い食事は摂ってはいけません。しかし、身体自身も出汁スープに塩を少々混ぜた物などを要求します。しかも、それが何よりもおいしく感じます。
身体が要求していることは明らかです。
最近は手軽なインスタントの出汁が手に入ります。手間をかけて作った天然の出汁と化学調味料などで作った人工出汁の違いは何でしょう。天然の出汁は摂れば摂るほど次にまた摂りたくなる。化学調味料はその反対で、どんどん食に対する興味が失せてくるものと感じています。
最近は無添加出汁と言って手軽に使える出汁がたくさん出ています。無添加と言っても何が無添加なのか? 「食塩無添加」といったら食塩のみ無添加ということです。逆に言うと、他の添加物は使っているということのようです。
おいしくて、身体にも、美容にもよい本物の出汁。日本に生まれてよかったと思わせる本物の日本の出汁のを文化を大切にしたいですね。