供のころ、ハイシーAという今でいうサプリメントのようなものが置いてありました。母親が、健康に良いということでどこかで買ってきたようです。
甘酸っぱくて美味しいので、ちょこちょこ食べていました。あまり食べると、尿が黄色くなります。今では直接ビタミンCだけ摂ってもあまり吸収されないことが分かっています。無駄も多かったのかもしれません。
ビタミンとは、「生命」を意味するラテン語の「VITA」が語源なのです。ビタミンはという栄養素は、私たちにとってエネルギーにはなりませんが、体の機能を正常に維持するため不可欠な物質です。
ビタミンは13種類あり、大きく、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分類されます。
脂溶性ビタミンとは?
水に溶けにくく、アルコールや油脂に溶けるビタミンで、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(フィロキノン)の4種類がこれに当たります。
水溶性ビタミンとは?
水に溶けやすく、油脂に溶けにくい性質を持つビタミンで、ビタミンB群とビタミンCがあります。ビタミンB群には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、ビオチンがります。
ビタミンB群はなぜB群なのか?
ビタミンの研究が始まったころ、ビタミンB群は「生体内で代謝反応を促す補酵素として働く」という共通点があり、単一物質と考えられていました。
ビタミンB群の種類と効果(働き)
ビタミンB1(チアミン)の働き
- 糖質からエネルギーを作り出す
- 私たちの皮膚や粘膜の健康維持に働く
- 糖質を栄養源として使っている脳神経系の正常な働きに関係している
ビタミンB1が多く含まれる食品
豚肉、レバー、うなぎ、穀類の胚芽(米ならヌカ)、たらこ、ナッツ類
ビタミンB2(リボフラビン)の働き
- 動脈硬化症や老化の原因となる過酸化脂質を防ぐ
ビタミンEは、過酸化脂質の生成を抑える。それに対してビタミンB2は、過酸化脂質を消去する。- エネルギーを作り出してくれる脂質の代謝に使われる
- ヒトの成長に必要
- 皮膚や粘膜の健康を維持する働き
ビタミンB2が多く含まれる食品
豚、牛、鶏などのレバー、うなぎ、牛乳、緑黄色野菜、キノコ類
ビタミンB2の特徴
- 熱には強いが水に流れてしまうので、煮汁ごと食べる料理でお摂る良い
- 光に弱い
- 抗生物質、精神安定剤、ステロイド、経口避妊薬などの長期間服用により欠乏する
ナイアシン(ニコチン酸)の働き
- 糖質、脂質、タンパク質からエネルギーを産生する過程で、補酵素として働く
- トリプトファンからも体内で合成される
- アセトアルデヒド(二日酔いの原因)を分解する時の補酵素
ナイアシンが多く含まれる食品
たらこ、カツオ、ムロアジ、マグロ、落花生など
パントテン酸(ビタミンB5)の働き
- 3大エネルギーの産生に補酵素として働く
- 体はストレスが起きると副腎皮質ホルモンが分泌され、ストレスを和らげる。パテントン酸は、副腎の働きを強化して、副腎皮質ホルモンの産出を促進する。
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす
- コエンザイムAの構成成分
- 皮膚や粘膜の健康維持
- 免疫抗体の合成にも関係
- 神経伝達物質の合成
- 薬物の解毒作用
パントテン酸が多く含まれる食品
レバー、鶏もも、にじます、子持ちがれい、さけ、いわし、納豆など
パントテン酸の語源は、ギリシャ語の「いたる所に存在する」で、いろいろな食品に含まれています。
ビタミンB5の特徴
- アルコール、カフェインを多く摂る人は消耗されやすい
- 腸内細菌によっても作りだされる
- パテントン酸の語源は、ギリシャ語で「いたるところに存在する」という意味
ビタミンB6(ピリドキシン)の働き
- 皮膚、髪、歯などの健康維持
- 貧血を予防
- 分解されたアミノ酸が、ヒトの体特有のタンパク質に再合成されるのを助ける
- 脂肪肝(肝臓に脂肪が蓄積する)を予防する
- タンパク質からエネルギーを作り出す
- セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ギャバのどの合成に使われる
- 月経前の「月経前症候群」を軽減する
ビタミンB6が多く含まれる食品
カツオ、まぐろ、サケ、サンマ、バナナ、レバー
葉酸(プテロイルグルタミン酸)の働き
- ビタミン12とともに新しい赤血球を作りだすために必要なビタミンで「造血のビタミン」とも呼ばれている
- 細胞を新しく作りだすために必要な核酸(DNA、RNA)を合成する役割
- 胎児の「神経管閉塞障害」を防ぎ正常に発育するために、妊婦が葉酸を摂取することが重要
- 脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を防ぐという報告がある
葉酸が含まれる食品
牛レバー、菜の花、ほうれん草、枝豆、モロヘイヤ、ブロッコリー
※葉酸の特徴は、光に弱いので冷蔵庫に保存すること。また、調理でほとんどが溶けだしてしまうのでスープごと食べたほうが良い。
ビタミンB12(コバラミン)の働き
- 葉酸と協力してヘモグロビンの生成を助ける
- 悪性の貧血に有効
- 脳からの指令を伝える神経を正常に保つ
- 脳が正常に機能するための働きが考えられている(認知症患者が脳内のビタミン12濃度が低い)
- 補酵素として、タンパク質や核酸の合成、中枢神経機能の維持、脂肪の代謝
ビタミン12がふくまれる食品
かき、レバー、牛レバー、鶏レバー、さんま、あさり、にしん、しじみ
ビタミンB12の特徴
- ビタミン12が小腸で吸収される時、胃壁から分泌される内因子と呼ばれる物質が必要なので、胃を全摘手術した人や、胃粘膜に病変がある人は欠乏症が起こる
- ビタミンB12はコバルトを含み、「赤いビタミン」とも呼ばれる
- 熱には安定しているが、光や空気で酸化するので、密閉して冷凍保存する
- 料理は、汁、スープごと食べる
ビオチン(ビタミンH)の働き
・3大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)の代謝をサポートする
・ヒスタミンの産生を抑制し、皮膚炎を予防すると考えられている
・アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、脱毛、白髪などの改善に有効と考えられている
ビオチンが含まれる食品
いわし、にしん、レバー、卵、落花生などの豆類、野菜
ビオチンの特徴
・腸内細菌によって合成されるので、長期間、経管栄養を受けている人に皮膚炎、脱毛などがみられる
・生の卵白を多量に摂ると、卵白中のアビジンというタンパク質が、ビオチンの吸収を阻害し、欠乏状態になる
・タンパク質としっかり結合した形で存在しているため分解されにくく、ビタミンB群の中では比較的安定していて、加熱にも強い
ビタミンB群を過剰摂取した場合
・B6のうちピリドキシンのみを摂取した場合 ⇒ 感覚神経に障害の報告
・サプリでB1を摂取した場合 ⇒ 頭痛、いらだち、かゆみなどの皮膚症状
・ビタミンB2 ⇒ かゆみ、しびれ、嘔吐
・ビタミンB5 ⇒ 吐き気、食欲不振
・ビタミンB6 ⇒ 末梢感覚性神経炎、知覚神経障害、シュウ酸腎臓結石などが起こる危険性
・葉酸 ⇒ 亜鉛の吸収が阻害される。また、神経障害、発熱、じんましん
最後に
ビタミンB群は、エネルギー代謝にも関わるものが多く、私たち生命にとっても大切な栄養素であるとともに、皮膚や髪の毛など、美容にとっても大切な栄養素です。
だからと言って、サプリや薬で単一成分のみを多量に摂取することは弊害も多いようです。
ビタミンB群は、腸内細菌によっても作られるものが多く、通常は不足しないとされています。しかし、最近は、抗生剤などの薬を飲む機会や食品添加物も多く、腸内環境にとって好ましい状態ではありません。
健康維持や美容のたみには腸内環境をととのえ、野菜などの食品からビタミンB群の維持を図ることがベストのように思えます。
参照
・グリコ「栄養成分百科」
・栄養学の基本
・森下自然医学より